酒場その2
「今夜は俺の夢をみてくれませんか?
・・・・・・・・。
・・・って、酔ってるのか、俺?」
「自分で言ってて、引いた。」
「…俺はみますよ。あんたの夢。」
夜も更けた。
ここの所、連日連夜。今日も今日とてロベルト=クロムウェルにつきあってもらって酒場で楽しいひとときを過ごしたのだが、明日も早い。そろそろお開きにしようとアイリーンは席を立った。
で、まあ、別れ際のロベルトのセリフが、前述のアレである。
あいかわらず夢見がちというかなんというか、ある意味本当に期待を裏切らない男だ。
もはやいちいち引く気もなくして、微笑ましいとすら思っている自分にアイリーンは苦笑する。
いやそれどころか、もしかしたらちょっと嬉しいかも…と思いかけて、
いかんいかん。ここで私まで惚けてはバカップルに直行だ。
アイリーンは頭を振って、恐ろしい考えを振り払った。
「…なにか言ってくださいよ〜!」
と、恥ずかしいセリフを放置されたままだったロベルトが、またしても耐えきれず声をあげる。彼は酒に酔っても顔には出ないたちなのだが、こういう状況には弱い。案の定、今は耳まで真っ赤になっている。
そういう反応をされると、どうにもからかいたくなってしまうのだが、その辺わかっているのだろうかこの男は。
「…いいわよ?」
「へ?」
アイリーンはロベルトを見つめたまま、ことさらに艶を含んだ声で甘くやさしくささやいた。
予想通り間抜け面をさらしてくれるロベルトにうっかり吹き出しそうな顔の筋肉を叱咤して、さらににっこり笑いかける。
「みるわ。あんたの夢」
「・・・・・・・・・・」
ところが盛大に狼狽えてくれると思ったロベルトは、そう言った途端、いきなり難しい顔で黙り込んでしまった。
……嫌な予感。
こういう時彼の脳内では妄想全開の思考が巡っている。それはもうすごい勢いで巡っている。(というのは学習済みだ)。とりあえず危険な予感がするので、気をそらすためにわざとつっかかってみる。
「なによロベルト、嬉しくないの?」
「…嬉しいですよ。嬉しいけど嬉しくないっす。」
「なによそれ」
その答えに、なんとなくむっとしてしまう。人がせっかくサービスで…いや実はからかっただけだが、つき合って恥ずかしい答えを返してやったというのに、嬉しくないとか言われる覚えはない。
しかし、アイリーンの不機嫌などとてもかまっていられないという様子で、ロベルトは力説してきた。
「だって、俺ですよ?!あんたの夢の中でなにするかわかったもんじゃありません!あんたの夢に登場するなんて、羨まし過ぎる。ちくしょう…許せないぜ、
夢の中の俺!」
「許せないってあんた…」
……いかん。こいつは想像以上に馬鹿すぎる。
アイリーンは思わず額を押さえて呻いた。
羨ましいも何も自分だろうとか、いったい何を妄想しているのかとか、あんた普段夢で私になにしているのよとか、突っ込みどころが多すぎて言葉を失う。
「そうだ!じゃあ一緒に寝ましょう、プリンセス・アイリーン。そんで俺、あんたの夢に行きますからそしたら一緒に遊…ぐふっ!!」
きらきらと名案を語るロベルトの腹に正拳を入れて、アイリーンはさっさと帰ることにした。
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