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絶対だいじょうぶ


25日間で1000万ゴールド。稼げれば自由の身、稼げなければ政略結婚。

…という分の悪い取引の初日、外出の同行をロベルトに頼んだのは単に消去法だった。

まずスチュアート=シンクは問題外。関係がこじれたあの日以来、声をかけてもかけてもさんざん切り捨てられてきたのだ。同行は引き受けてくれるかもしれないが、何を言われるかわかったものではない。十中八九落ち込む気がする。
初日から気分最悪で出発するのは遠慮したい。験が悪すぎる。

タイロン=ベイルとは幼い頃からの付き合いもあり、気心が知れているので良いかもしれないと思う。
が、彼といるとどうしてももう一人の幼馴染み、スチュアートのことを思い出してしまう。
断じてタイロンのせいではない。スチュアートが悪い。
わかってはいても、やはり同行を頼むのはためらわれた。

カーティス=ナイルは腕は確かだ。生きながら伝説になっている稀代の暗殺者である。協力してもらえるならば心強いと思う。心強いとは思うが、あいにく積極的に関わりたくはない相手だ。恐いもの見たさというのはなくはないが、さすがに初日から同行を頼んで肝試しをしたくはない。

残るはシャーク=ブランドンとロベルト=クロムウェル。
シャークは婚約者候補の中では、比較的まともだと思う。金勘定第一の悪徳商人だとしても、その感覚は理解の範疇だ。話をする機会はあまりなかったのだが、友達としてなら仲良くなってもいいと思える。話していても、気安く話せる気がする。
…のだが、気安くなりすぎる可能性がある。万一なにかの間違いで(ひどい言い草だ)好きになっては困るし、自惚れる訳ではないが好きになってもらっても困るのだ。私は普通の人と結婚したい。そしてシャークは普通じゃない。

そんなわけで最終的にロベルトに同行を頼んだ。
なんといっても決定的なのは、付き合いの長さだ。もちろん北と南の幼馴染みの比ではないが、ライルが私の家庭教師に着任したのとほぼ同時期から面識がある。とすると結構長い付き合い。にもかかわらず、その付き合いは表面だけだ。どちらも突っ込まない。挨拶と世間話で終わる。
今までずっとそんな感じだった。期間中、多少同行を頼んでもお互い表面だけの付き合いで過ごせる気がする。
さらにいえば、ロベルトはスリルとカジノに恋しているような男だ。
私がそれより魅力的に映るはずもないし、重度のギャンブル病など私も好きにならない(これまたひどい言い草だ)。

よし、だいじょうぶ。

……だいじょうぶ、だと思ったのに。

カジノに行くと、私を見つけたロベルトが嬉しそうにやってくる。
そんなへらりと締まりのない表情を見ても、なんだか嬉しくなる自分がいる。自然に私の口元も緩む。
端から見ると、親密な男女に見えるのではないだろうか。その証拠に、フロアにいるディーラーさんたちの意味ありげな微笑みが痛い。
それでもロベルトと話していると楽しい。触られても嫌じゃない。
やばい、と思った時には手遅れだった。
ロベルト以外にはもう同行を頼む気にもならなくなっていた。
「何の罠よ…」
思わずこぼれた嘆息に、「それは恋の罠ですよ、マイプリンセス〜」と笑うロベルトの幻聴まで聞こえてきそうだ。我ながら重症だ。

ずっとただの顔見知り。
興味のないものには見向きもしないカジノ引きこもり。
普通じゃないスリル狂なんか私は好きにならない。
―――絶対だいじょうぶだと、思ったのに。

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